エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「……分かったわ。やってみる」

「とりあえず、お互いに知っていることを確認しあいましょう。入れ替わっている間に、なにが起こったのかちゃんと知らないと、別行動したときに問題になるわ」

ふたりは改めて椅子に腰かけ、顔が入れ替わった後の出来事を報告しあった。
ベリルだったときのシンディは、主にヒューゴと一緒に夜会に参加したりしていたらしい。
ヒューゴは色々と人脈を持っているようで、様々な貴族の館で賭けポーカーを内密に開催していた。
その間、奥方たちの話し相手を務めていたらしい。

一方ベリルは、どこまで報告するべきか迷った。
ローガン王子が本物ではないことは伝えるべきことだが、彼本人の了承を得ていない。
考えた末、ローガン王子は今普通の状態ではなく秘密にすべきことがあること。手紙を書くから、それをまずは側近のコネリーに渡し、あとは彼の指示に従うよう伝えた。
そして当座は王妃教育を受けてもらい、現在のローガン王子とは一定の距離を取るように言い含める。

「婚約者と一定の距離を取れだなんて、どういうことなの?」

「強引に近寄ってこようとするから、貞操を奪われないように気を付けて欲しいんです。あと、王妃様や侍女のドナはとてもやさしくて良い方々だから信用なさってもいいわ」

手紙には、姉との入れ替わりが戻ったことと、どこまで姉に伝えていいかを問う内容を書き込んだ。
コネリーが判断してローガンに指示を仰いでくれるだろう。確実にコネリーかローガンが最初に開けるように、きちんと封蝋をして、シンディに渡す。

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