エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

 そして不思議な夢を見た。
夢の中で、ベリルはなぜか水の中にいる。泳げもしないのに、水の中を普通に歩けているのだ。呼吸も普通にでき、顔の周りだけ水がないように感じる。
視界の端に青い髪を持つ男がいて、なにかを探しているように、岩陰や海藻の隙間を見ている。

「何を探しているの?」

ベリルが問いかけると、はっとしたようにこちらを向く。

「……真実の愛だよ」

男の声には、聞き覚えがあった。
低い、願いを問う、あの声だ。

「あなた、誰? 魔法使い?」

「君こそ誰? 新しい持ち主かな? こんなにリアルに僕の中に入って来るなんてすごいね」

言われていることがいまいち理解できない。
とにかく彼の言葉を聞き逃さないようにじっと見つめていると、彼は口もとをゆっくり緩めた。
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