エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「ねぇ、僕を助けてくれないかな」
「助ける?」
「半分だと暴走しちゃうんだ。僕の魔法は交換の魔法で、本来は交換相手の同意がなければ交換はできない。でも今は半分だから制御できないんだよ」
「半分って……じゃあやっぱり魔石は二つあるの?」
男はイエスがノーははっきりと答えなかったが、小さく頷いた。
「際限なく望みをかなえようと思えば破滅する。分かるだろう? 生きているものはひとりだけで生きているわけじゃないんだ。協調しなければ欠けていく。だから僕は真実の愛がほしい。欠けたものを繋ぎ合わせる、愛の力が」
男の言葉を、ベリルは理解しきれない。何を言いたいのか、どうすればいいのか。
焦るベリルに、男は穏やかにほほ笑むだけだ。
「私にできることは、ある?」
聞けたのはそれだけだ。男の青い髪が水に広がり、周りの水も急に流れを持って動き出した。
「君が、正しいと思うことをすればいい」
目の前に空気の泡が立った。それは一気に広がって、視界を奪うほど白くなる。
「……夢」
目を開けたベリルは、窓から差し込む光で、すでに太陽が高い位置まで上っていることを知った。