エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
* * *
侯爵家でシンディとベリル、ふたりの顔が戻ったころ、王城でも動きがあった。
ローガンの私室には、現在ダレンが寝泊まりしている。とはいえ、ひとり野放しにするわけにいかないので、コネリーかバートのどちらかが常に監視をしている。
今日はコネリーが同じ部屋のソファで待機していた。
「なんだよ? コネリー」
「ダレン、しばらく大きな声を出さないように」
彼はダレンをソファに座らせ、続き間の扉を開けた。バートに付き添われて中へ入ってきたのは、ダレンの顔をしたローガンだ。
「はっ、これはこれは。本物の王子様。逃げたんじゃなかったのか」
ここ数週間、ローガンとして暮らしたダレンは、すっかり横柄な態度だ。
ローガンは表情を変えずにダレンに近づく。その指には、エメラルドの指輪がはめられていた。
「ダレン、そろそろその顔を返してもらいたい。君はあの日、どう願った? 俺に捕らえられそうになって瞬間、何を願って、俺の顔を手に入れたんだ?」
「俺は別に、なんとかして逃げ出したいって思っただけだ。顔が変わればいいのになんて願うわけないだろ」
言われてみればそれもそうだ。
盗賊として追い詰められた男が願うのはその身の自由、それだけだろう。顔を変えたいという願いはむしろ、その美しすぎる顔にコンプレックスを抱いていた、ローガンこそが持っていた願いだ。
侯爵家でシンディとベリル、ふたりの顔が戻ったころ、王城でも動きがあった。
ローガンの私室には、現在ダレンが寝泊まりしている。とはいえ、ひとり野放しにするわけにいかないので、コネリーかバートのどちらかが常に監視をしている。
今日はコネリーが同じ部屋のソファで待機していた。
「なんだよ? コネリー」
「ダレン、しばらく大きな声を出さないように」
彼はダレンをソファに座らせ、続き間の扉を開けた。バートに付き添われて中へ入ってきたのは、ダレンの顔をしたローガンだ。
「はっ、これはこれは。本物の王子様。逃げたんじゃなかったのか」
ここ数週間、ローガンとして暮らしたダレンは、すっかり横柄な態度だ。
ローガンは表情を変えずにダレンに近づく。その指には、エメラルドの指輪がはめられていた。
「ダレン、そろそろその顔を返してもらいたい。君はあの日、どう願った? 俺に捕らえられそうになって瞬間、何を願って、俺の顔を手に入れたんだ?」
「俺は別に、なんとかして逃げ出したいって思っただけだ。顔が変わればいいのになんて願うわけないだろ」
言われてみればそれもそうだ。
盗賊として追い詰められた男が願うのはその身の自由、それだけだろう。顔を変えたいという願いはむしろ、その美しすぎる顔にコンプレックスを抱いていた、ローガンこそが持っていた願いだ。