エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
ローガンはダレンの目の前に立ち、自分の顔を取り戻したいと強く願う。
しかし指輪は何の光も発さない。静かに沈黙を守ったままだ。

「はっ、何も起こらないな。魔力が無くなっちゃったんじゃないか?」

ダレンが楽しそうに笑う。が、すぐに黙った。
バートが彼の首筋にナイフを突きつけたのだ。

「主君を馬鹿にするとどうなるか試してみるか?」

「うわっ、やめろよ。あんたらだって今俺がいなくなったら困るんだろ? 大事な大事なローガン王子がいなくなっちまうんだから」

「お前を殺せば顔がもとに戻る可能性だってある。最終手段として、我々がそれを考えていることは忘れるな」

コネリーもいら立ちを隠さずに言う。
ローガンの顔のおかげで、自由に過ごせているが、あくまでも身柄は確保されたものだとダレンには教えておく必要があるのだ。

「あの時、顔が入れ替わった魔法の発動条件は何だったのでしょうね。それが分かれば楽なんですが」

「まあ戻らなかったものは仕方がない。しばらくは今まで通りに過ごすしかないだろう」

そう言いつつも、ローガンは失望を隠せなかった。
シンディがベリルだと知り、ローガンは元の姿で彼女の前に立ちたいと心から思うようになった。
恐ろしいダレンの見た目のときも、内面を見つめてくれた彼女と、お互い本当の姿で向き合いたいのだ。
そしてもっと彼女のことを知りたい。なにが好きで、なにが嫌いか。自分の言葉で、彼女を笑わせたい。彼女と過ごす穏やかな時間を、これからも、何度でも味わいたいのだ。
女性にこんな風に感じるのは初めてのことで、ローガン自身、この気持ちを持て余している。

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