エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「ヒューゴ様、シンディ姉さま。ここは?」
「普段の応接室は母上たちが使っているから、今日は別室を使おうと思って。大丈夫、綺麗にしてあるよ」
清潔さを心配したわけではない。会場である広間から離れすぎてしまうことを心配していたのだが、ヒューゴに微笑まれて、その意識はすっ飛んでしまった。
「いえ、あの、ここにいるということをお母さまに知らせた方がいいかと思いまして」
「大丈夫。ここを使うことは父上には言ってあるから」
フューゴが笑い、扉を開ける。
そこは小さめの応接間で、ソファがローテーブルを囲むように配置され、壁には絵画がかけられている。
ソファには、ヒューゴと彼の友人であるエドモンド。そしてシンディの友人であるソフィアが既に座っていた。
「遅いわよ、シンディ」
「ごめんなさい。ベリルを探していたの」
彼らが座るソファの前には、一枚板のテーブルがあり、カードが重ねておいてある。
シンディは慣れた様子でソファに腰掛け、隣にベリルを座らせた。
他にも一緒に来た紳士と令嬢が席に着く。
ヒューゴが赤のベロア地の箱を持ってきて、うやうやしく礼をする。
「さて。今日の景品はこれだよ。魔法がかかっているという噂がある宝石なんだ」
箱を開くと、そこには緑色にきらめくエメラルドのネックレスが入っていた。