エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

ローガンはシンディのことを思い出す。直接目にしたのは、クリスマスの日だけだ。
服が汚れることをやたらに気にしていて、わかりやすく“貴族の令嬢”といった態度だった。薄汚れた身なりのものへの態度は威圧的で、ややヒステリックな印象だった。

「まあ、明日聞くしかないな。コネリーにでも頼んでおいてくれ」

「わかりました」

ダレンの顔をしたローガンは、ほぼ一日中ここから出れない。本当なら自分が飛んで行って、彼女の不安を取り除いてやりたいのに。

ふと、顔を上げると、バートがじっとこちらを見ている。無口で余計なことは言わない男だが目がにやにやとしていて冷やかされているような気分になる。

「……なんだ」

「いいえ。ローガン様もそういう顔をなさるのかと」

そういう顔とはどういう顔だ。聞いてみたい気もしたがやぶへびになるような気もした。

「……もう寝る」

「そうですね。おやすみなさいませ」

ランプの光が消される。
固い床の感触に何度も寝返りを打ちながら、ローガンはベリルのことを考えていた。
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