エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
ヒューゴの真意

 昼食のとき、シンディはベリルがローガン王子に近づきすぎないように、と言った意味を実感した。
もともと深窓の王子と言われた彼のことは、シンディとてあまり詳しくはない。
顔立ちは噂通りのハンサムで、見ているだけで胸がときめくほどだ。しかし、ナイフ使いが上手じゃない。所作が洗練されていない。話すときも、顔や胸元をまじまじと見てきてぶしつけだと感じた。せっかくの美しい顔も、この態度では魅力は半減されてしまう。

だが、シンディは男のあしらい方を心得ている。このタイプの即物的な男は、逃げれば追ってくるものだが、褒めて自尊心を満足させている間は、案外とおとなしい。
手を出してきそうなタイミングには違う話題を振って、また一から男の長所を引き出してやればいい。
そうしているうちに時は過ぎ、ローガンは執務の時間となりコネリーに引っ張って行かれる。

「お見事です」

去り際、コネリーがポソリと耳打ちした。
シンディは微笑みを返し、ドナとともに勉強の部屋へと戻る。

その途中でのことだ。
城の図書館から出てくるヒューゴと目があった。

ヒューゴは普段、父伯爵の仕事を手伝っている。文官である伯爵が作る文書の裏付けや統計を取ったりするのが仕事だ。
先ほどローガン王子を簡単にあしらって見せたシンディだが、相手が好きな人となれば別だ。彼を前にすると、どうしても冷静になれない。
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