エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~


 一方、侯爵邸にカンヅメにされているベリルは、朝とも昼ともつかない食事の後は、母にこれ以上怒られないように、部屋にこもって刺繍と向き合いながら、今後について考えていた。

まずはヒューゴに会って、今までシンディが渡したものを返してもらわなければならないだろう。
最悪、ベリルとシンディの私物は仕方ないが、母が父からもらったような思い出のあるものは返してもらいたい。
そのあと、父にヒューゴとの婚約破棄を申し入れる。
もともと父はヒューゴが好きではないようだし、宝石を渡していた経緯が知られれば間違いなく激怒するだろうから、これはすんなり通るだろうとベリルは思っていた。

エメラルドのネックレスは、ローガンに返したほうがいい。そのためにどうにかしてローガンと連絡を取らなければならないが、まずは今日のシンディの成果を聞いてみなければ打つ手が決まらない。

(……青い髪の魔術師)

ふと、ベリルは今朝がた見た夢を思い出した。
夢の中の魔術師は、半分では暴走していてしまう、と言っていた。
もうひとつのエメラルド――ローガン王子とダレンの顔を入れ替えた指輪と、このネックレスをひとつにするにはどうしたらいいんだろう。
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