エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「ほら見てごらん。魔法の石だ」
「ただのエメラルドじゃない」
「願いが叶うと言われているんだよ。まあ、噂に過ぎないだろうけどね」
「どうしてそんな噂が立ったのかしら、不思議だわ」
シンディとヒューゴだけではない。彼らの友人たちも興味津々だ。
ベリルも、興味を惹かれてそのネックレスを見る。複雑に編み込まれたチェーンの中央に、三センチはありそうな大きなエメラルドがつけられている。美しく豪華だが、ベリルのような若い娘がつけるにはやや古臭いデザインだ。
だけど、妙に目が惹きつけられる。
それは美しさというよりは、禍々しさを含む魅力だった。緑色の光がきらめいて、その表面にのぞき込む人間を映し出す。
『……はなに?』
声が聞こえたような気がしてベリルはあたりを見回す。けれど、ベリルに向かって話しかけている人間は誰もいない。
『君が欲しいものは何? 何と交換する?』
誰のものとも知れぬ声が、ベリルの頭に響く。きらめく緑色の光から、目を離せない。
「……ルってば」
シンディに呼ばれてベリルは我に返る。まるで石に魅入られていたように意識が飛んでいた。
「今、誰か……何かおっしゃって?」
「やあね、私がずっと呼んでいたのに。今からこれを賭けてポーカーをするの。ベリルも一緒にやりましょう?」
「え?」
賭けカードは商売としては禁止されているが、友人同士で楽しむ遊びとして広まっていた。