エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
『僕は真実の愛がほしい。欠けたものを繋ぎ合わせる、愛の力が』

「どうすればひとつになるのかしら。ふたつを一緒に置いておくだけでいいの? 真実の愛なんてどうすればわかるの?」

誰かを好きになる気持ちが、真実のものかそうじゃないかなんて、どう判別するというのだろう。
今にして思えば、ヒューゴへの気持ちは憧れが先行したものだったと分かるけれど、恋をしていたそのときは、真実の想いだと信じていた。
ローガンに向かう今の自分の気持ちには気づいているけれど、これが真実の愛かと言われれば分からない。

二階にあるベリルの部屋から太陽の光が入らなくなってきた。朝日が入るこの部屋は西日が入らない。暗くなれば、もう夕方だということだ。

もうじきシンディも帰ってくるだろう。今日の状況を聞かなくては。

やがて馬車の音がして顔を上げる。きっとシンディだと思い、ベリルは窓辺に寄った。
玄関前に止まっている馬車は侯爵家のものではなかった。そして降りてくる人物を見て息を止めた。

やって来たのはシンディではなく、ベリルの婚約者であるヒューゴだったのだ。
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