エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「上玉ですね。ずいぶんといいところのお嬢さんのようじゃないですか」
「僕の未来の奥方だよ。この間まで従順に言うことを聞いていたのに、急に反抗期になったんだ。少しお仕置きをしないといけないからね。彼女を一室に閉じ込めておいてくれるかな」
「なんだ、奥方ですか。残念ですなぁ。分かりました。預かっていればいいんですね」
残念そうに下碑た笑いを浮かべる男が、一度下がり、ロープを持ってくる。
「窮屈でしょうがね。我慢してくださいよ」
両手首を後ろで縛られ、身動きがとりにくくなる。男はヒューゴと同じくらいの背丈で、彼よりもがっしりとしている、手の厚みもあり、軽くつかまれただけでも、痛いくらいだ。
「暴れるようなら多少乱暴してもいい。……いっそ喉をつぶしてもいいかもしれないな。余計なことを話さなくなるだろう?」
さらりと残酷なことを言うヒューゴにベリルはぞっとした。フェンレイは涼しい顔で「へい、了解」とつぶやく。
こんな物騒な会話を平然とできる男たちに、ベリルは恐怖を感じるのとともに、怒りも最高潮に達していた。
足を震わせながら、キッと顔を上げてヒューゴをにらみつけた。
「あなたが、こんなに酷いことをできる人だなんて思ってなかった」
「僕を壊したのはシンディだよ。君は姉の尻ぬぐいをさせられているだけだ」
「……そうやって、どこまでも誰かにせいにするのなら、あなたは決して幸せになどなれないわ」
睨みつけたまま言えば、再び頬を殴られる。今度はフェンレイに体を押さえられているため、体ごと飛ばされることはなかったが、口の中に血の味が広がった。