エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「……そうなの」

話しているうちに、ベリルは少しばかり気を抜いてしまっていた。
次の瞬間、凄い力で扉を押され、ベリルは前のめりになって倒れ込んだ。
隙間に足を入れ、中になだれ込んできたフェンレイは、倒れているベリルの上にまたがってくる。

「やれやれ、ようやく入れた。まさかお嬢さんが抵抗できるらい元気だとは思わなかったよ」

彼の重みで、うまく身動きが取れない。
願いが叶うなら、少しばかりと言わずもっと力を願えばよかった。今のベリルの力が普段より強く、フェンレイの力がいつもより弱いとしても、彼を押しのけられるほどの力はない。

「何をするつもりですか?」

「一応、賊に襲われた体を装わないといけねぇからなぁ。それに、あんたはいろいろ知りすぎたんだ。殺しはしないが、生きる希望と声を奪えというのが旦那のご依頼だ」

フェンレイはベリルの細い首にその大きな手をまわした。

「くそっ、うまく力が入んねぇな。いっそ一気にやってやった方がアンタの痛みも軽く済むんだろうが。……力があるってだけでこんな泥仕事させられるのもホントごめんだ」

フェンリルは心からこの残虐行為を望んでいるわけではない。
そう思ったベリルは、渾身の力で彼の腕を押さえる。
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