エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
そうしてフェンレイを拘束した彼は、すぐさまベリルの側によって、彼女の手に付けられたロープを切り、両手で頬を包んだ。

「よかった。無事ですか? こんなに頬を腫らして……」

「み、みっともない顔で……恥ずかしい」

自分では確認していないが、ヒューゴに殴られた頬はそれなりに腫れているらしい。恥ずかしくなってうつむくと、ローガンは感極まったような様子で、ベリルを抱きしめた。

「俺は初めてこの顔になったことに感謝した。誰よりも早く、君を助けに来ることができたんだから」

ぎゅうと抱きしめられて、ベリルの張っていた気持ちもほどけていく。
途端に目の周りが熱くなって、こらえきれず滴が零れ落ちた。

「こ、……怖かったです」

もっと毅然としなくてはと思うのに、涙が止まることなく後からこぼれて、言葉が形にならず嗚咽になっていく。ローガンはそれを右手で優しくふき取りながら、左手で背中をなでていてくれた。
彼の息が瞼にかかり、その距離の近さを改めて意識する。彼の瞳に映っている自分を見つけて、肩の力がぬけていった。

「ベリル」

「……ローガン様」

どちらからというわけでもなく、ふたりは自然に顔を寄せ合い、唇を重ねた。
するとその瞬間、ベリルのもものあたりが熱くなった。ドレスの隠しに入っているエメラルドが、また光ったのだ。
そしてローガンの右のポケットからも光が放たれている。
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