エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「それ、いつの話?」
「一週間ほど前かしら。居合わせたローガン王子が怪我をしたそうで、騎士団員はそろって罰を与えられたそうよ」
「それは災難ね」
シンディとソフィアが交わす会話に、ヒューゴが混じる。
「それより、盗賊は何人だったんだ? 王城に盗みに入るのに、ひとりってことはないだろう?」
「目撃されたのはひとりだけだそうよ。騎士団員が総動員で塀を取り囲んだのに、いつの間にか逃げられていたんですって。怖いわね」
「たったひとりで逃げることなんてできる? 賊は魔法でも使えたのではないの?」
止まらない噂話を聞いているうちに、軽食でお腹がふくれたベリルは眠くなってきた。
うつらうつらしながら、ゲームの成り行きを見つめる。
やがてカードゲームは佳境に入ったようで、ソフィアが「ダメ。負けだわ」とカードを投げ出した。
エドモンドが座り直し「一人抜けたな。どれ、本気を出すぞ」と前のめりになる。
うとうとしながらそれを眺めていたベリルは、いつの間にか眠ってしまったらしい。シンディの鋭い声で目が覚めた。
「やったわ。私の勝ちね!」
「おめでとう。シンディ。ネックレスは君のものだ」
ヒューゴは女王陛下にでも渡すように、うやうやしい態度で彼女にネックレスを差し出す。