エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
屋敷内に入ったコネリーとシンディは、バートが後ろ手に縛られたフェンレイを引っ立てて出てくるのを見て、すぐに緊張を解いた。
「どうやらもう片付いていたようですね。バート……、ローガン様?」
コネリーは目を見張った。バートの後ろで、守るようにベリルの肩を抱きながら戻ってくるのは、ローガンだ。
ダレンの顔ではない、美しく優美な造形を持った、深窓の王子そのものだった。
「お顔が……どうしたんですか。戻ったんですか?」
「ああ。魔石がひとつに戻ったんだ。それによって、すべての魔法が解けたんだと思う」
ローガンの掌を広げて見せた。そこにあったのは、ネックレスよりも指輪よりも一回り大きなエメラルドの宝石だ。加工金具はついておらず、ただ綺麗にカットされた状態のエメラルド。
「俺の顔が戻ったということは、今頃城ではダレンが大変なことになっているはずだ。すぐに戻らないと」
「そうですね」
コネリーが答えたその時、シンディが飛び出してきてベリルに抱き着いた。
「ベリル! 無事でよかった! 体は? 大丈夫なの?」
彼女の右頬は腫れていて、痛々しい。ローガンは立ち止まり、姉妹の再会を邪魔しないようにそっと距離を置く。
背中を押されて、ベリルは王子と視線を見交わしたあと、姉を抱きしめ返した。
「姉さま。こんな危険なところまで迎えに来てくれたの?」
「あたり前だわ。母様だって心配していたのよ? この頬はあの男にやられたの?」
ベリルは少し迷ったようだが、神妙な顔で首を振る。そこに、労わるようなまなざしを見て、シンディは一瞬息をのむ。