エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「その時から、あまりに美しいあなたに、私が心を奪われていた、ということにしました。それで、主への忠誠心と恋心に揺れているのを察したローガン様が身を引いてくださったという形ですね。美談でしょう。あながち間違いでもないので、その線で進めさせていただいています」
「はっ?」
さらりと、変なことを言われてシンディの目が点になる。コネリーは言うが早いかシンディの前にひざまずき、白魚のような右手の指の付け根にキスを落とした。
「初めてシンディ様がシンディ様として来られたときに、この人だと思ったんですよ。ダレンを手玉に取るところなど、最高にぞくぞくしました。あなたは私がずっと待ち望んでいた女性だ。私は伯爵家の次男でヒューゴ殿と比べても格は落ちますが、後悔させないとお約束しますよ。いかがです? シンディ様」
シンディの顔が真っ赤に染まり、胸が早鐘を打つ。いきなりの展開についていけてない。
「コネリー様、どういうこと?」
「簡単に言うと、同じ顔をしていたとしても、私にはあなたとベリル様の違いが分かりました。そして、貴方のほうに強烈に惹かれたということですね」
「嘘……。だって私、性格悪いわよ?」
「嘘じゃありません。手ごわい女性のほうが好みなんです。ただ従順とか素直な女性よりも、一筋縄ではいかなさそうな女性のほうが落とし甲斐があるじゃないですか。今は偽装と言うことで構いません。あなたを篭絡するのに、数日で足りるなんて思っていませんから。ただ、私は手加減するつもりはありませんので、覚悟はしておいてくださいね」
言葉は丁寧だが、どう見てもへりくだってはいない彼の態度に、シンディは口をパクパクさせるしかない。