エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「お父様は……なんて言ったの?」
「かなり苦虫を噛み潰しておられました。ですが、ローガン様がベリル殿を娶りたいという話をしたら色めき立ってしまいまして、話は流れてしまったので。まあ、また後日侯爵邸にお邪魔します」
シンディは胸のドキドキが収まらない。
コネリーはビアズ伯爵家の次男だ。家の格はアシュリー伯爵家より上だが、次男ということは家を継げるわけじゃない。結果としてヒューゴより条件の悪い相手に、父親が頷くはずなどない。
だけど、コネリーならば父をも言いくるめることができるのではないだろうか。
そう思ってしまう自分は、もしかしたらもう、恋に落ちているのかもしれない。
だが、それを簡単に認めるほど、侯爵家の娘は安くない。
「わかりました。お受けしますわ。あなたのお手並みを拝見するのも楽しそうですもの」
「そう言ってくださると思いました。必ずあなたを手に入れて見せますよ」
ぱちんと片目をつぶった彼は、ではお近づきのしるしに、とシンディの目尻にキスをした。
折り目正しく礼をして出て行く彼の背中に、抱き着きたい衝動が沸き上がってくる。
なんとか見送って、大きく息を吐きだした。
手ごわい女性と評されたことがシンディには嬉しかった。シンディもローガンと一緒で、外見で評価されることが多かったのだ。中身を見て、しかもそれを好意的にとらえられることなどほとんどなかった。
「嘘みたい。なんだかすごく、ワクワクしてるわ」