エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~


 差し込む朝日で目が覚めたとき、喉がカラカラで、ベリルは水を頼むために侍女を呼んだ。
彼女は水を飲み終えたベリルに「申し訳ありませんが、急いで着替えをいたしましょう」と急かす。

「え?」

「ローガン様が廊下でお待ちです」

王太子を廊下で待たせるなど、不敬以外の何物でもない。
侍女に、「後で伺うので」と伝えてもらおうとしたが、「ローガン様は待つと仰せです」と言われて、慌てて着替えた。まともに化粧をする時間はなく、恥ずかしいような気もしたが、昨日は腫れたひどい顔を見られている。
今更かという思いもあり、そのまま王太子を迎え入れた。

「すみません。お待たせいたしました」

「悪かったな。急がせるつもりじゃなかったんだ。ただ、顔が見たくて」

そういうローガンの顔こそ、キラキラと輝いているようだ。
鋭角の顎に通った鼻筋、二重瞼に、瞳は宝石のように輝いている。朝日より眩しいとベリルは思う。

「このような格好で失礼いたします」

「どんな姿でも君は君だろう。君に会えると思えば、待つ時間も楽しいから問題ないよ」

ローガンはベリルの手を取ると、右手の中指の付け根にキスをした。途端に体が硬直して、変な手汗が出てくる。
男慣れしていないベリルの姿に、ローガンはふっと顔を緩めた。

「君は、本当にかわいいな。いざというときには、驚くほど毅然とした姿を見せるのに、俺が少し触れただけで、こんな風に恥じらうなんて」
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