エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「だ、だって……! 私、本当に慣れてないんです。その……」
「だからうれしいんだって。それが」
ローガンは、ベリルの手を裏返し、今度は手のひらにキスをする。そのたびに頬を染め恥じらうベリルの反応をたっぷり楽しんでから、ようやく手を放してくれた。
「ごめんごめん。座っていいかな。君に話がある」
「あ、もちろんです。こちらへどうぞ」
部屋に備え付けられていたソファを進める。ベリルも請われるまま隣に座った。
「実は昨晩、ブラッドリー侯爵と話した。コネリーがうまく言ってくれて、シンディ殿との婚約破棄と、君と改めて婚約を結ぶ話については、無事に進められそうだ。ただ、……母上はシンディ殿を気に入っていたから、反対している。もちろんその時の中身は君だったのだから、いずれは仲良くなれると思うんだが、今は君のことを猜疑的な感情で見ている」
優しく気遣ってくれた王妃様を思い出す。
彼女に憎まれていると思うと、とても切ない気持ちにはなるが。
「王妃様を騙していたんですもの。仕方ありません。……私、時間をかけて、ローガン様のお相手として認めてもらえるように頑張ります」
皆に賛成してもらえるほど、簡単じゃないことはわかっていた。ここから先は、自分の力で切り開いていかなければならないのだ。