エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
彼の言い分に憤ったのは、エメラルドの人魚です。
たしかに、それまで彼を拒絶し続けたのは彼女です。だけど、それは、彼に脅されていると思い込んでいたから。
そんな純粋な思いならば、どうしてもっと真正面から向かってきてくれなかったのか。

「私の事が好きなら死なないで。しつこく付きまとえばいいでしょう。すぐ死ぬような根性無しなんて……大嫌いよ」

彼女の涙が、青い魔法使いの口の中に落ちました。その瞬間、魔法の光がふたりを包みました。
彼女の望みと、魔法使いの望みが交換されたのです。

「あなたの望みは、なんだったの?」

不思議に思ったエメラルドの人魚が尋ねると、彼は嬉しそうにほほ笑みました。

「俺は、君の心が欲しいとずっと願い続けていた。だから魔法がかかったということは、君の心が変わったってことだ」

「え?」

「大嫌いと言ったのに……大好きだと聞こえたんだ」

エメラルドの人魚は、真っ赤になって黙りました。
青い魔法使いは、この意地っ張りな人魚のことが、心から愛おしいと思ったのです。

こうして、青い魔法使いは、エメラルドの人魚への長い片思いを実らせました。
ふたりは仲良く暮らしていましたが、やがて終わりの時がやってきます。

エメラルドの人魚にも寿命が来たのです。
長寿の亀の生はあまりに長く、ひとりになった青い魔法使いの心は、少しずつ壊れてしまいました。

ある日、目の前に現れた男が持っていたエメラルドの原石に、彼はひどく心惹かれました。

“この石の中で眠れたら、きっとずっとエレナの夢を見れる”

そうして、魔法使いは魔石となったのです。

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