エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
顔を真っ赤にして叫ぶ父親に、シンディは目をすがめる。
ベリルの相手はどんな人間でもよしとするのに、シンディの相手にはいちゃもんを付けるこの父親とは、一生気が合わないのではないかと思う。
シンディは意見を押し付けられるのは嫌いだ。そうされればむしろ反発したくなる。
「ではお父様は私が誰と結婚すれば満足なさるの」
「もちろんローガン王子だ。だが、そうでないならば侯爵以上の家柄か他国の王子か……」
「かいかぶりすぎではありませんこと? 私にはそんな上流な方々と渡り合っていく力はありません。……お父様は私が幸せであるかどうかなんてどうもいいのね」
「バカを言うな! お前の幸せを一番に願っているに決まっているだろう」
父の言う“幸せ”は裕福な家に嫁ぐことと同意だ。そういう価値観しか持っていないのだろう。
(我が父ながら狭量だわ。これ以上話しても埒が明かない)
これだから父と話すのは嫌だ、とシンディはため息をつく。
どれほどシンディが理解してもらおうと言葉を尽くしたところで、価値観の違う相手を攻略することなど出来はしない。
「お父様は、コネリー様を知らなすぎるのよ。うちで夜会を開いてご招待するのはどうかしら。もちろん、お父様が望む男性も招待していただいて結構です。私も、ほかの男性をよく知りもしないでコネリー様に決めるつもりはありませんから」
売り言葉に買い言葉という感じで言ったシンディの提案を、侯爵は気に入った。
かくして、ブラッドリー侯爵家主催の夜会が開かれる運びとなったのである。