エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
横からコネリーが補足する。
ジャックは、コネリーを見ると野ネズミでも見つけたときのような眇めた目をした。

「これはこれは、ローガン様の腰ぎんちゃくではありませんか」

「コネリー・ビアズです。ジャック・ダックワース様。人の名前は正しく呼んでほうがよろしいですよ。記憶力が疑われます」

すましたままのコネリーに、ジャックはさっと顔を染め、語気を荒くした。

「全く、ローガン様が重用するからいい気になって! ……シンディ殿、踊りましょう。こちらへ」

「でも」

ジャックの誘いに、シンディは困ってコネリーを見つめる。しかしコネリーはすましたままだ。

「どうぞ。今日の夜会にはシンディ殿の良さを改めて皆様に知っていただく趣旨もあります。破談により落ちた評判を取り戻すくらい、優雅な踊りを見せていらっしゃい。その代わり――ラストダンスは私と」

まっすぐに注がれるまなざしは、シンディの心臓から上に血を集めてしまう。
心臓が飛び出してしまいそうなほど高鳴って、逆に足先がなんとなく震えて心もとなくなった。

「で、では……」

ジャックの手を取って踊りだしたシンディだが、頭の中はコネリーのことばかりだ。
踊りながら、ついつい彼を探してしまう。

彼はグラスを傾けながら、ブラッドリー侯爵と話をしていた。
何を言っているのか、気になって仕方ない。父は絶対に彼に失礼なことを言うはずだからだ。

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