エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
シンディは起きてからまだ鏡を見ていないのか、慌てて召使に鏡を持ってくるように頼むと、鏡を見て眉をしかめた。
「本当だわ。変な夢を見たからそのせいかしら」
「夢?」
「ええ。『欲しいものは何?』とか、男の人の声がして」
「まあ……」
昨日、エメラルドのネックレスを見たときに聞こえてきた声を思い出し、ぞっとする。
「そ、それ。あのネックレスのせいじゃないの? 魔力があるという噂だったし」
「まさか。ヒューゴが用意したのよ? 出所がおかしいものを出すわけがないわ。伯爵子息よ」
「……そうよね」
それはそうだ。と思いたいけれど、そもそも賭けカードは認められていることではなく、内密で行われていることだ。
伯爵も関与していない可能性のほうが高い。それなのに、安易に信用していいものだろうか。
「こんな顔じゃみっともないわね。先に身だしなみを整えてくるわ」
侍女を呼びつけながら、シンディが部屋に戻っていく。
ベリルは不安な気持ちを消せないまま、食事を終えた。