エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
魔法の発動
その晩、いつもよりも早めに帰宅したブラッドリー侯爵はご機嫌だった。
「我が美しい娘たちよ、朗報だ」
両手を広げて、娘たちを抱きしめようとする。
ベリルはおとなしく受け入れたが、シンディは父の顔の前に掌を広げ、「何事ですか、お父様」と不機嫌そうに眉根を寄せた。
「シンディ。お前の美しさをみなに見せつけるときがやって来たぞ」
「え?」
「ローガン王子がようやく結婚する気になられた」
「……どういうことです?」
レイリル王国第一王子ローガン・クルセイドは御年二十三歳。
幼少期は病弱だったこともあり、室内で過ごされることが多かった。健康体となった今もどちらかと言えば引きこもりで表舞台には出てこない。そのため、深層の王子と揶揄されてもいた。
臣下は結婚の話を何度も持ってきたそうだが、王子は断り続けていたとも言われている。
「その王子が! ようやく! 王都にいる貴族の娘を集めて花嫁選びをすると言い出したのだ! 私は前々から妃になるのにお前ほどふさわしい娘はいないと思っていた、シンディ」
「は? 何を言っているのお父様。いやよ! 前から言っているでしょ? 結婚したい相手は決まっていますと」
言い返すのはシンディだ。
「我が美しい娘たちよ、朗報だ」
両手を広げて、娘たちを抱きしめようとする。
ベリルはおとなしく受け入れたが、シンディは父の顔の前に掌を広げ、「何事ですか、お父様」と不機嫌そうに眉根を寄せた。
「シンディ。お前の美しさをみなに見せつけるときがやって来たぞ」
「え?」
「ローガン王子がようやく結婚する気になられた」
「……どういうことです?」
レイリル王国第一王子ローガン・クルセイドは御年二十三歳。
幼少期は病弱だったこともあり、室内で過ごされることが多かった。健康体となった今もどちらかと言えば引きこもりで表舞台には出てこない。そのため、深層の王子と揶揄されてもいた。
臣下は結婚の話を何度も持ってきたそうだが、王子は断り続けていたとも言われている。
「その王子が! ようやく! 王都にいる貴族の娘を集めて花嫁選びをすると言い出したのだ! 私は前々から妃になるのにお前ほどふさわしい娘はいないと思っていた、シンディ」
「は? 何を言っているのお父様。いやよ! 前から言っているでしょ? 結婚したい相手は決まっていますと」
言い返すのはシンディだ。