エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「会えば気に入る。ローガン王子は男でもハッとするような整った顔立ちの男だ。だが武芸より学問が好きで学術院のほうに顔を出しているほうが多いから、あまり国民の前に出る機会はないが、博識だぞ? 現在二十三歳だが、二十五になるまでは結婚しないと言い切っていて、国王も手を焼いていた。その彼が急にあんなことを言い出すなんて驚いたが。……身の危険を感じたのが逆に良かったのかもしれんな」

「身の危険……?」

「いや、こっちの話だ。とにかく、お前はシンディを説得しなさい。ヒューゴよりいい男はいくらでもいる。あんな極上の娘を何が悲しくて……」

そこまで言って、父侯爵はハタとベリルを見つめる。

「お前もそういえば年頃だな。誰からも求婚の文が来ないから忘れていたが」

「す、すみません」

夜会に出ても踊るよりも話すよりも食べてばかりいるのだから仕方ない。
親しい男性など、ヒューゴ以外にはいなかった。

「……そうだな。いいことを思いついた。お前はいいから、部屋に戻っていなさい」

「はい」

父に逆らうことなど、ベリルにはできない。
不安を抱えながら、ベリルは眠れぬ夜を過ごした。
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