エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「何もいらないわ。それより、……貴方は聞いているの?」
「え?」
「お父様が、ヒューゴにはあなたをやるつもりだって。私はおとなしく王太子様との夜会に出席しろと」
「なにそれ。寝耳に水だわ」
戸惑いを隠せないままそう言えば、シンディは目の前でわっと泣き出した。
「シンディ姉さま、泣かないで」
慰めようと駆け寄ったベリルは、顔をあげたときの憎悪のこもったシンディの表情に、思わず体をびくつかせる。
「姉さま……」
「同情なんてやめてよ! 私、知ってるのよ。あなたもヒューゴが好きだったんでしょう? どうして、あなたは望みがかなえられるの? ヒューゴは私を選んでいたのよ? 両親の了承さえ取れれば、すぐにでも結婚するつもりだったのに……」
シンディは手に持っていたエメラルドのネックレスをギュッと握りしめた。
あの夜会の賭けカードで手に入れたものだ。最近はつけているところを見たことはなかったが、大切に持っていたらしい。
「ずるいわ。どうしてあなただけ願いがかなえられるの? たった一歳しか違わないのに。私が姉に生まれたのは私のせいじゃないのに! ヒューゴが自分のものになるのなら、私、あなたになりたかった……!」
シンディの瞳から涙が零れ落ちたその瞬間。エメラルドの宝石が一瞬光った。