エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
ベリルがためらっていると、執事の声が廊下から響いてくる。
「ベリルお嬢様、シンディお嬢様がどこにいるかご存知ありませんか? 旦那さまがお呼びなのですが」
ふたりは顔を見合わせた。
シンディは意を決したように「ここにいるわ」と返事をすると、ベリルの背中を押した。
「お姉さま!」
「バレはしないわよ。試してみましょう? 彼が私とあなた、どちらをシンディと認識するか」
「開けてもよろしいですか?」
執事のノックが再び響く。
もうどうしようもない。ベリルも心を決めた。
執事が自分をシンディと判断したら、諦めてシンディになりきろう。
「どうぞ」
「失礼いたします」
ふたりが小さなときから屋敷に仕えている執事は、室内を見回して一瞬目を瞬かせた。
「これは……。お二人で洋服の交換でもなさっていたのですか?」
ふたりは服のサイズは同じだ。ただ好む色が違う。
シンディは赤やピンクといった暖色系を好むが、ベリルは水色や薄紫といった寒色系の色合いを好む。
「さあ、シンディお嬢様、旦那様がお呼びです。参りましょう」
執事は、迷いもなくベリルの前に立った。
ベリルは息をのみ、固唾をのんで見守るシンディの視線を感じながら、拳を握り締めた。
「……はい」
仕方がない。シンディの顔を持っている以上、ベリルがシンディとしてふるまうしかないのだ。
「ベリルお嬢様、お邪魔して申し訳ありませんでした」
「いいえ。何のお話かしらね。お姉さま」
シンディは嬉しそうな声だ。顔を見たくなくて、目をそらしたままベリルは「……さあ、どうかしら」とつぶやく。
「ベリルお嬢様、シンディお嬢様がどこにいるかご存知ありませんか? 旦那さまがお呼びなのですが」
ふたりは顔を見合わせた。
シンディは意を決したように「ここにいるわ」と返事をすると、ベリルの背中を押した。
「お姉さま!」
「バレはしないわよ。試してみましょう? 彼が私とあなた、どちらをシンディと認識するか」
「開けてもよろしいですか?」
執事のノックが再び響く。
もうどうしようもない。ベリルも心を決めた。
執事が自分をシンディと判断したら、諦めてシンディになりきろう。
「どうぞ」
「失礼いたします」
ふたりが小さなときから屋敷に仕えている執事は、室内を見回して一瞬目を瞬かせた。
「これは……。お二人で洋服の交換でもなさっていたのですか?」
ふたりは服のサイズは同じだ。ただ好む色が違う。
シンディは赤やピンクといった暖色系を好むが、ベリルは水色や薄紫といった寒色系の色合いを好む。
「さあ、シンディお嬢様、旦那様がお呼びです。参りましょう」
執事は、迷いもなくベリルの前に立った。
ベリルは息をのみ、固唾をのんで見守るシンディの視線を感じながら、拳を握り締めた。
「……はい」
仕方がない。シンディの顔を持っている以上、ベリルがシンディとしてふるまうしかないのだ。
「ベリルお嬢様、お邪魔して申し訳ありませんでした」
「いいえ。何のお話かしらね。お姉さま」
シンディは嬉しそうな声だ。顔を見たくなくて、目をそらしたままベリルは「……さあ、どうかしら」とつぶやく。