エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

夜会には何人もの令嬢がやって来るはずだ。前評判でいけばシンディが選ばれるのは確実だが、中身がベリルでは生来のシンディの美しさが陰ってしまう。

(でもそのほうがいいのかしら。縁談がまとまらなければ、姉さまも困らないし)

でも、そうすればシンディの評判は少なからず落ちる。そして顔が戻らない以上、ベリルはシンディとして生きていかなければならない。
それまでのシンディの快活さと比べれば、ベリルは陰気とも思えるだろう。さらなる求婚者が現れるとも思えない。

(そうすれば今度はシンディがお嫁に行き遅れてしまうわ。お父様も失望する。どうしよう。本当に困ったわ)

悩んでいるうちに、父の執務室へと連れてこられる。ノックをして、扉を開けた執事にぺこりと会釈をし中に入った。

「お父様、お呼びですか?」

「来たか? シンディ」

強いまなざしを向けられ、ベリルは目を見続けることができなくてうつむいた。すると父親は不思議そうに小首をかしげて「どうした? 珍しくしおらしいな」と笑った。

「お話とは……」

「明日、仕立て屋が来る。今持っているドレスを晩さん会に出席するために手直ししてもらうつもりだ」

「ですが」

「何度も言うが、ヒューゴは駄目だ」

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