エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「まずお名前を教えていただけませんか」
「おれはロー……いや、えー、アンドリューだ。アンドリュー・フック」
どこかで聞いたことのあるような名前だ。
アンドリュー、アンドリューと口の中で言いまわしてみるが、今は全然思いつかない。
「私はベリ……」
自分の名前を言いかけて、ハッと我に返る。今はベリルではない。顔はシンディのものだった。
「……シンディ・ブラッドリーと申します」
「侯爵の娘さんか。であればここは侯爵家が支援する孤児院ということだな?」
す「まずお名前を教えていただけませんか」
「俺はロー……いや、えー、アンドリューだ。アンドリュー・フック」
どこかで聞いたことのあるような名前だ。
アンドリュー、アンドリューと口の中で言いまわしてみるが、今は全然思いつかない。
「私はベリ……」
自分の名前を言いかけて、ハッと我に返る。今はベリルではない。顔はシンディのものだった。
「……シンディ・ブラッドリーと申します」
「侯爵の娘さんか。であればここは侯爵家が支援する孤児院ということだな?」
するりと父の爵位が出てきたことに驚き、ベリルは目を丸くする。
「父をご存知なのですか?」
「ああ。……いや、今は違うな。……とにかく! 怪しいものではないんだ。いや十分怪しいと思うけれど。とにかく騒がないで聞いてほしい」
「はあ。……でしたらこんな寒いところは何ですし。……シスター、申し訳ないのですけれど、孤児院の応接室を貸していただけませんか?」
「ですがお嬢様、得体の知れない男性など」
「悪い人ではないと思うの。でも許可は必要ね。院長先生がいらっしゃってからお願いしてみます」
「そうしていただけると助かります」
孤児院の院長を務めるのは、ベリルの伯母だ。元々子爵家に嫁に行ったが、夫を亡くし家督を継いだ息子とも折り合いが悪く、行き場を失った彼女は、妹を頼って侯爵家へとやって来た。そこで支援している孤児院の院長をしないかと父が持ち掛けたのだ。
るりと父の爵位が出てきたことに驚き、ベリルは目を丸くする。
「父をご存知なのですか?」
「ああ。……いや、今は違うな。……とにかく! 怪しいものではないんだ。いや十分怪しいと思うけれど。とにかく騒がないで聞いてほしい」
「はあ。……でしたらこんな寒いところは何ですし。……シスター、申し訳ないのですけれど、孤児院の応接室を貸していただけませんか?」
「ですがお嬢様、得体の知れない男性など」
「悪い人ではないと思うの。でも許可は必要ね。院長先生がいらっしゃってからお願いしてみます」
「そうしていただけると助かります」
孤児院の院長を務めるのは、ベリルの伯母だ。元々子爵家に嫁に行ったが、夫を亡くし家督を継いだ息子とも折り合いが悪く、行き場を失った彼女は、妹を頼って侯爵家へとやって来た。そこで支援している孤児院の院長をしないかと父が持ち掛けたのだ。