エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「なんか、……この間と印象が違うな」
「え?」
「妹さんと違って、もっとツンケンしているんだと思っていた」
「まあ」
本当にそう思ったのだとして、口に出してしまうところはどうなのだ。女性に対するとき、男性は誉め言葉だけを口にするものだと、シンディは言っていたものだが。
「あなたも、見かけよりずっと穏やかな話し方をなさいますのね。私、最初に見たとき、不審者かと思いましたもの」
「え? ああ。そうだろうな。すまない」
滑るように口から言葉が湧き出て、ベリルは自分で驚いた。いつものベリルなら、こんな失礼なことを口には出せない。
今はシンディの容姿だから? いや、それだけではない。アンドリューならば言っても怒られないと思えたからだ。見かけよりずっと聡明で穏やかで。ゆったりとした雰囲気を持っている。
「シンディが来てるんですって?」
やがて、シスターを伴って院長がやって来る。
「あなたがひとりで来るなんて珍しいわね。ベリルなら時々来るけれど」
「伯母様。ごきげんよう」
挨拶しているうちに、アンドリューも立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。
「勝手にもぐりこんでしまってすまない。外にいたのだが寒くて少しばかり暖をもらおうと忍び込んでしまった。悪気はなかったのだ」
「あなたが寝ていたという不審者ね?」
院長は上から下まで彼を見て、はあと大きくため息をつく。