エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「まあ、景品とはいえ他の男からもらった宝石を持っているわけにはいかないか……。シンディは王太子様の花嫁候補になると侯爵様から伺ったよ。王城に出入りするようになるなら、なおさら持たない方がいい。これは魔石だから、あまり人に見せてはいけないんだ。ベリルがもらって正解だよ」
「……ヒューゴ」
シンディはヒューゴが淡々と語るのが不思議で仕方なかった。
つい先日まで、熱く愛を語ってくれたのは何だったのか。
君を誰にも渡したくない。釣り合わない家名なのはわかっているけれど、仕事で成果を出し、必ず侯爵に認めてもらうよう努力する。そう言ってくれていたはずだったのに。
「あの、今日私が参りましたのは……」
「うん、知ってるよ。婚約の話だろう?」
「……ヒューゴ様はシンディ姉さまのことがお好きだったんじゃなかったの?」
思わず尖った声が出てしまった。
ヒューゴはきょとん、とした顔をしつつ、ふっと破顔した。
「そうだよ。……でも、相手が王太子様ではさすがに敵わないしね。侯爵様には代わりに君をと言ってもらえた。君はおとなしいけれど、優しくて気立てがいい。いい縁を繋いでもらえたと思っているよ」
シンディの胸に暗いものが落ちる。
いい縁とはどういうことだ。まるで、侯爵家と繋がれるのであればどちらでもよかったという言いぶりではないか。