エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
スノードロップは素朴な花だ。例えられて嬉しいとはシンディは思えないが、ベリルだったらきっと喜んだだろう。
「君は派手好きでもないし家庭的だ。家をしっかり守ってくれる妻になってくれると思う。ゆっくりでいい。仲良くなっていこう? 俺たちは夫婦になるんだから」
「ヒューゴ……」
彼がすでに心を切り替え、ベリルとの婚約を受け入れていることに、シンディは衝撃を覚えた。
貴族社会では、親から決められた縁談を断ることは難しい。けれどこんなにあっさりと心変わりができるものなのか。
じわりと、胸を彩るエメラルドが熱を帯びる。
「……?」
【願いごとは……】
「またこの声」
ぐらりとめまいがして、シンディは頭を押さえる。
「どうした? ベリル」
「何でもないわ。ちょっと、ふらついただけ」
「心配だな。大丈夫か?」
「ええ。それより、ヒューゴ。教えてほしいことがあるの」
シンディは頭を押さえたまま、心配そうに肩を支えてくれるヒューゴの手に、自分の手を重ねた。
「この首飾りは、一体どういう経路で入手したものなの? この魔石についているいわくとは何? 私、この首飾りを身に着けるようになってから、誰のか分からない声が聞こえるのよ」