エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
夜会の日。ベリルは侍女たちに磨き上げられ、細い体を豪華なプリンセスラインのドレスで包んだ。
豊満な胸が美しく見えるVネックでのデザインで、首には豪華なダイヤモンドのネックレスがつけられた。
「おお、美しいぞ、シンディ」
「ありがとう、お父様」
華やかなシンディに召使もほうとため息をつく。ベリルも鏡を見てほれぼれとする。造作は似たようなものなのに、やはりシンディは美しい。
「とっても綺麗よ、シンディ姉さま」
ベリルの顔をしたシンディは、穏やかにほほ笑んだ。シンディは頻繁ヒューゴのもとを訪れているようだが、その内容をベリルに話してくれることはない。結局、二度三度持ち物について確認し合っただけで、今後のことも何も話せてはいなかった。
その後、父とともに馬車に乗り王城へと向かう。
「王太子様――ローガン様は思慮深く聡明なお方だ。美しいだけでなく機知に富んだお前の会話術を存分に披露しておいで」
父ににこやかに言われたが、機知にとんだ会話などベリルにできるわけがない。
「まあ、努力はします」
「いつものお前になればいい。大丈夫だ」
父の、シンディへの信頼を感じ取ってますます気が重くなる。
ベリルとしては作法を間違わないかどうかさえ危ういというのに。