エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「ローガン様、個別にお話しするのは全員との挨拶が終わった後になさってください」
「そうか。ではコネリー、おまえがシンディ殿の相手をしておいてくれ。そうだな、踊った姿が見たい」
コネリーと呼ばれた男性は嫌そうに軽く王太子を睨むと、ベリルの方へ手を差し出した。
「私はコネリー・ビアス。踊っていただけますか、シンディ様」
「ビアス伯爵のご子息ですか?」
「ええ。ローガン王子の副官をさせていただいております」
二コリを笑って見せた彼は、とても優しそうでほっとした。王太子本人よりも話しやすい。
「早く行ってこい!」
ローガン王子の声に急き立てられるように、ベリルとコネリーは広場の中央へ出た。
「私、あまり上手じゃないんです」
「ご謙遜を。ブラッドリー侯爵家のシンディ様と言えば、座っていても踊っていても人の目を離さないと評判です」
「そんな……あくまで噂ですわ」
それはシンディの方だ。中身がベリルの今、踊りなんて本当に基本ステップしか踏めない。
「おっと」
「すみません!」
早速足を踏み外し、バランスを崩したところを助けられる。
「緊張しておられる?」
「……はい」
コネリーはそれまでささやかに添えていただけの手に力を込めた。しっかり支えてもらって、前よりも動きやすくなる。