エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「シンディ殿は噂で聞いていたよりも、素朴な感じがしますね。……ああ、すみません。誉め言葉ですよ。普段男ばかりの中にいるので、女性を褒める言葉が苦手なのです。申し訳ない」
「そんな……、もったいないお言葉です」
「……ローガン王子をどう思われました?」
コネリーの視線が、ソファで次々やって来る令嬢の挨拶を軽く受け流しているローガンへと向いた。
そもそもベリルは王太子の前評判もそこまで知らないが、あまり人前に出ないことから深窓の王子とまで言われていたはずだ。
「思ったより……社交的というか。人前にお出になるんですね。ただ、穏やかだと聞いていましたが意外と……」
言葉が荒いと言いそうになって、慌てて口をつぐんだ。王太子に対する悪口なんて言ってはいけない場だった。
しかしコネリーは笑ったままウィンクをする。
「構いませんよ。今は私しか聞いておりませんし。……王子への印象を聞いて、容姿を最も先に褒めなかったのもあなたくらいです」
「あ! 申し訳ありません。私ったら……」
そうだ。彼の最大かつ分かりやすい美点がそこにあったというのに。
そして慌てるとステップが乱れる。慌てて足もとに視線を向けると、コネリーが力を込めて彼女の体を支え、音の終わりに合わせて綺麗に着地させてくれる。