エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「お、王妃様にはご機嫌麗しく。お、お会いできて光栄です!」

「ごきげんよう、シンディ様。お噂はかねがね。息子があなたを選んだと知ってとても嬉しかったわ。座ってちょうだい」

向かいの席を示されて、ベリルは恐縮しながらソファに腰掛ける。
ローガン王子も美しい男性だったが、王妃も年齢を感じさせない若々しさと気品を兼ね備えていて、ベリルは目を奪われた。

「ローガンったらずっと女性に興味を持ってくれないから困っていたのよ。なのに最近様子がおかしいと思ったら、花嫁選びの夜会を開きたいなんて言って……。もしかしたらあなたの噂を聞いて会ってみたかったのかもしれないわね」

「そんな……」

「私は辺境伯爵家の出ですから、それなりに苦労したの。でも陛下が支えてくださったから何とかやっていられるわ。シンディ様は家柄的にも全然問題ありませんけれど、慣れない暮らしに苦労することもあるでしょう。どうか私のことを、本当の母のように頼ってくださいませね」

「王妃様」

溢れんばかりの優しさにベリルは感動した。
国で一番高位の女性がこんな優しい言葉をかけてくれるなんて。

目を潤ませたベリルに微笑みかけた後、さて、と王妃は口もとを扇で隠しながら居住まいを正す。
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