エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
もし盗まれた宝石と、賭けポーカーの景品となった魔石が同一のものだとすれば、ヒューゴが盗んだという可能性もある。しかし彼は伯爵子息で金銭に困っているわけではない。

(盗まれたものが出回っていて、それを買っただけかもしれないわ)

そう思って、ベリルは気を取り直した。そのうちに廊下の方が騒がしくなる。

「お待たせしてすまない。母上、シンディ」

荒々しく扉が開け放たれたかと思うと、従僕が椅子を引くのを待たずにローガンが座った。
ベリルは驚いて瞬きをする。

「ローガン。あなた最近落ち着きがないわよ。王子は人を待たせていてもいいのです。悠然と余裕を見せなさいといつも言っているでしょう」

「これは失礼」

ローガン王子は母親にそっくりの笑顔で応えると、ベリルのほうを向いた。

「美しいシンディと食事ができるのを楽しみにしていたもので」

「……光栄なお言葉でございますわ」

ベリルは微笑んだが、内心ではローガンの視線がぎらついているように感じて身の置き所がないような気分になっている。
まるで自分がお皿に乗せられた食べ物になっているようだ。
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