エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「シンディ、食後、少し時間はないのか? 我々は婚約者となったのだし、少しは語らいあう時間を持ちたいと思うのだが」
「はあ、でも」
ちらりと後ろに控えるドナを見つめる。予定が詰まっていると言ってほしい。
しかし助け舟は、ローガンの後ろに控えていたコネリーのほうからやって来た。
「ローガン様も予定が詰まっておりますよ。そうですね。三十分ほどなら、お時間をとれます。食後中庭を散歩されては?」
「それだけか? だったら散歩などせず室内でゆっくり……」
「散歩がいいですわ! ローガン様」
部屋でふたりきりになるなど嫌だ。ベリルにしては珍しいほど強気で散歩を推すと、ローガンは唇を尖らせ、コネリーはこっそりと苦笑していた。
「わかったわかった。……シンディをみなに見せびらかすのも悪くはあるまい」
「見せびらかすって……そんな」
「美しいそなたは宝石にも勝る。当然だろう」
褒められているのだろうが、全然気分はよくない。
食後、散歩している間も、ローガン王子は妙にスキンシップをとりたがる。そのたびに、ベリルは恥じらうふりをして彼から距離をとった。
「王子、お時間です」
きっちり三十分でコネリーが迎えに来てくれた時は心底ほっとしたものだ。