エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「やっ」

「……お前、何をする。王子に向かってその態度はなんだ」

「も、申し訳ありません。でも」

「今のは見逃してやる。ほら、隣に来い」

手招きされ、ベリルは思わず後ずさった。
今後を考えればここは従うべきだということはわかっていたが、ほとんど本能で逃げてしまった。

「シンディ!」と呼ぶ声が聞こえては来るが、追ってはこないようだ。彼の視界から逃れるために角を曲がったところで、今度は別の男性とぶつかる。固い胸に弾かれて倒れそうになるが、とっさに相手の男性がベリルの腕を引っ張ったので転ばずには済んだ。

「大丈夫ですか? ……これはシンディ様」

「コネリー様!」

現れたのはコネリーだ。思わずしがみついて助けを請う。

「わ、私。やっぱりこの結婚は、無理です。ローガン様が怖い」

「落ち着いてください。シンディ様。ローガン王子と一緒だったのですか?」

「突然連れ出されたのです。そしてふたりきりになって……突然。私、……怖くて」

ベリルが唇を押さえていることで、コネリーは察したらしい。

「シンディ様、こちらへ」といい、コネリーはなぜか使用人が使う通路に入っていった。
入口付近にある燭台を手に取り、それを持ったまま奥へと歩く。

「ここ……入ってもいいのですか?」
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