エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「こいつはバート・ボールズです。私と同じ、ローガン王子の側近になります。彼はボディーガードの側面のほうが強いですけどね」
ベリルは小さく頭を下げる。
こざっぱりとした短髪で、鋭い一重の瞳が、彼の印象を近寄りがたいものにしているが、こちらをまっすぐ見つめてくる瞳からは実直さが感じられる。あまりおしゃべりな性質ではなさそうで、頭を軽く下げただけで、説明はコネリーの担当だとばかりに視線を向ける。
向かい合わせに腰掛けているベリルとアンドリューに対して、コネリーとバートは座ろうとはせず、立ったまま説明を始めた。
「さて、では私のほうからご説明しましょう。あなたがお察しの通り、このお方こそ、本当のローガン・クルセイド王子です」
ごくりと息をのんで見つめるベリルに、アンドリューことローガンは苦笑を返し、コネリーから会話の主導権を受け取った。
「自分で話すよ、コネリー。シンディ……いや、ベリル殿。きっと君にも同じようなことが起こったんだろうね。だって君の顔がベリル殿のものでないことを知っている俺に、そんなことをいうのだから」
「ええ」
「……あの日、城に賊が入ったんだ。俺は部屋に待機するように言われたが、気になってね。ここにいるコネリーとバートを連れて様子を見に行ったんだ。使用人通路を使ってね」