エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
ローガン・クルセイドは美しいと噂の王妃とよく似た、見目麗しい若者だ。
しかし小さな頃から容姿ばかりを褒められてきた彼は、まるで自分の価値が容姿にしかないような気分になり、その姿を人の目にさらすのを極端に嫌っていた。深層の王子といわれるゆえんである。
城には戦争をしていたころに作られた隠し通路が多くある。使用人通路に通じたり、外に出ずとも騎士団詰め所に行けたり、城門を通らずに城下町に出れたりと網の目のように様々なところに繋がっているが、それらの詳細は古い文献に書かれているため、すべてを把握しているものはほとんどいない。
だがローガンは幼少期から図書室で引きこもっていたため、いつしかその古文書も読めるようになっていた。
現在、すべての地下通路を把握しているのは、城の歴史に詳しい学者と、こっそりと古文書を読みふけったローガンと、ローガンの冒険に付き合わされ続けたコネリーとバートのみである。
「賊が出たと聞いて、一番に思いついたのが、城下町へと続く地下通路を塞ぐことだった。この城の城壁は高く、門以外から外には出られない。近衛兵たちの警備が厚いのも門の周辺だ。賊が進入することはそもそも難しいはずなんだ。誰にも知られていないはずの、地下通路を知らなければ……ね。だから、進入できたということは、地下通路の存在を知っているのではないかと思ったんだ」
ベリルは頷いた。つまり、ローガンは賊の侵入経路として地下通路を疑っていたというわけだ。