エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「今思えば迂闊だったが、俺はコネリーとバートの二人だけを連れて、城下町へとつながる地下通路への入り口へ向かったんだ。そしてそこで、ふたり組の賊と鉢合わせた。ふたりは盗んだ宝物を麻袋に入れて持って逃げるところだったんだ。俺たちは剣で応戦したが、ふたりともなかなかの手練れだった。苦戦しているうちに、賊のひとりが、麻袋からエメラルドの宝玉を投げ、もうひとりの男に渡した。そして俺たちを突き飛ばすと一気に街のほうへ向かって駆け出したんだ」
エメラルドと聞いて、ベリルの心臓が騒ぐ。
「バートが逃げた男を追い、俺とコネリーは残った男を取り押さえようとした。しかし、俺が彼の上に馬乗りになったとき、まばゆい光が俺たちを包んだ。そして次の瞬間、取り押さえていたはずの男の顔が、俺のものと入れ替わっていたんだ」
「やっぱり……! エメラルドの魔石のせいなんですね!」
ベリルとシンディに起こったことが、ローガンの盗賊の男にも起こったのだ。
「じゃあ、今のローガン様は賊……?」
ベリルの顔がさっと青ざめる。会話はコネリーが引き継いだ。
「そうです。ふたりの顔が入れ替わり、私は混乱しました。加えて、騎士団が賊を探してやって来る音が聞こえてきたのです。とっさの判断で、私はローガン様にここから逃げ、バートと合流するように指示しました。声と特徴的な緑の髪はそのままでしたが、ローガン様の印象はみなその美しい顔で覚えておられるのです。顔が賊のものである以上、捕まえられるのはローガン様のほうだと思ったのです」