エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「私のことは放っておいてもらってよろしいんですよ」
「年頃の令嬢がそんなことでどうする。さあ、行こう」
ヒューゴにせかされ、ベリルは口に入っていたパンを飲み込んだ。
そのまま腰を抱いて隣を歩くヒューゴをそっと見上げる。
ヒューゴは端正な顔をしていた。綺麗な卵型の輪郭に、こげ茶の瞳とライトブラウンの巻き毛。顔のパーツひとつひとつが大きくて派手な顔をしているが、眉が細いせいか、印象としては柔らかい。
今まで出会った男の人の中で、一番美しいとベリルは思う。
「ほらみんな、連れてきたよ。ベリルだ」
広間の一角に向かい、彼が声をかけるだけで、みんなが振り向く。その輪の中心にはシンディがいて、ベリルを見て花咲くような笑顔を浮かべた。
「ベリルったらどこに行っていたの。これからみんなでカードゲームをするのよ。一緒にやりましょう?」
「カードゲーム? 私は……」
ポーカーは得意ではない。
駆け引きのようなことが苦手なのだ。
しかし、戸惑うベリルに気づかないようにシンディとヒューゴが続ける。
「ベリルは初めてだっけ? おもしろいよ。我が家のゲームは商品付きだ」
「そうよ。今日の商品はなに? ヒューゴ」
「見てのお楽しみ。面白いものが手に入ったんだよ」