エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
コネリーの説明に、ベリルの胸はざわついていた。ヒューゴが犯罪に関わっているかもしれないことと、そんな危険な宝玉をシンディが身に着けていることが心配だった。
ベリルの顔が青ざめていることに気づいたローガンは、そっと手を重ねてくれた。
顔を上げると、やはり一瞬ぎょっとしてしまういかつい顔つきだが、まなざしに優しさを感じ取って、ベリルは口もとを緩めた。

「ベリル殿。大丈夫か?」

「ええ。姉が心配なだけです」

「そうだな。……難しいかもしれないが、姉君からその宝石を預かってきてくれないかな。できれば入手した経緯も教えてほしいし。俺とダレンの入れ替わりが戻れば、俺が直接姉君を呼び出して聞き出すことができるんだが」

「無理なさらないでください。姉のことは、……なんとかしてみます」

そう言ってはみたものの、ベリルには不安しかない。シンディが、ベリルの言うことを素直に聞くとは思えないからだ。

「私……。今日は帰ります。姉のことが心配ですから」

不安がぬぐえないまま立ち上がったベリルを見て、ローガンがバートに呼びかける。

「バート、ベリル殿を屋敷まで送ってあげてくれないか」

バートは無言で頷いたが、ベリルは慌てて首を振った。
いつもなら、帰る時間を見計らって馬車が迎えに来る。今日はまだ昼食前なので来ていないが、伝令を出せばすぐに来てくれるだろう。

「とんでもない。大丈夫です。迎えを呼びますから」

「いや。君がちゃんと家に帰ったという報告が欲しい。バートなら信用できるから」

ローガンが紡ぐ言葉はいつも礼儀正しく柔らかい。顔が怖くても、少しも不快になどならない。

「ではお言葉に甘えます」
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