エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
ベリルが頷くと、ローガンはバートに目配せした。彼は無言で頷いて、出ていく。コネリーが「馬車の用意をしてくるそうです」と説明してくれた。
「ベリル殿。困ったことがあればまずなんでも相談してほしい。俺はなかなか表には出れないが、コネリーやバートに伝えてくれればいいから」
「ありがとうございます。ローガン様」
肩に重くのしかかっていた荷が下ろせたような気がして、ベリルはホッとした。
彼から注がれる優しいまなざしに、安堵と同時に胸がときめく。
ローガンはふと思い出したようにコネリーを呼ぶ。
「そういえばコネリー。実は俺がここに戻ってきたのは、城下町であの時逃げた賊のひとりと出会ったからなんだ」
「なんですって?」
「帽子をかぶっていたから、髪色の違いに気づかなかったようだ。逃げられたんだなと朗らかに肩をたたかれて。また今度、侵入の計画があるらしい。そいつの話だと、どうも首謀者が城の中にいるようだな。あの秘密の通路を教えたり、鍵を開けたりと手引きしている人物がいるような口ぶりだった」
「ではダレンも知っていると? 吐かせましょうか?」
「いや、俺に向かって名前を言わなかったくらいだから、ダレンはただの下っ端なんだろう。内通者とのやり取りはその男だけがやっているようだった」