エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

「何をやっているのよ。そんなことをし続けなければ得られないものなんて、愛じゃないわ」

「私はヒューゴのために良い縁談もすべて断ったし、美しいと評判の自分の顔さえ手放した。この愛を失ったら何もなくなってしまう」

「そんなことはないわよ。ベリルの姿だって、ちゃんと愛してくれる人はいるわ」

自分が言ったとは思えない慰めがベリルの口から飛び出した。
自分だってずっとそう思っていたはずだ。
どこに行っても、褒められるのはシンディで、ベリルは誰からも愛されない、と。

「でも比べられるんだもの! 姉とは違うって」

こうして、自分以外の人間がそう言っているのを見ると、まるで呪いのような言葉だと思う。
言われるたび、自信を無くして卑屈になって、自分を見失ってしまう。誰より自分が自分を愛さなければ、輝けるはずなどないというのに。

「たしかに、ベリルよりシンディ姉さまのほうが美しいわ。でもベリルにはベリルの良さがあるはずよ。それを生かしていけばちゃんと愛してもらえるはずだわ」

その言葉が浮かんだ瞬間、ベリルの目には涙が浮かんできた。
ようやく、姉と比べる自分から解放された気がした。そして同時に、ベリルの顔に戻りたいと切に思った。

しかし、シンディのほうは逆だ。
傷ついたように眉を寄せ、ベリルをにらみつける。

「なによ、自分は綺麗になったからって。あなたなんて、いつも私の後ろで自分からは何もしないでおこぼれを期待していたくせに。急に自信持っちゃってなんなの? もともと、私の顔なのに。……そうよ。私のものだわ」

「……シンディ姉さま?」

狂気を宿らせた瞳が、ベリルを捉える。ベリルは思わず息を飲んだ。狂気のまなざしを向ける自分の顔が、恐ろしくてたまらなかった。

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