あのね、私ね、
何か揺られてる、ユラユラしてる、それになんだろうこの安心感……それに私が好きな爽やかなシトラスの香水いい匂いだな……

瞼をゆっくり開けてと起きるとタクシーの中で視界にスーツを着た男の人の膝が目に入った。

は、これは噂の膝枕。ついについに私も膝枕デビューか、なんて呑気に考えていたのもつかの間、この膝の持ち主は誰だと思い、勢いで起き上がった。ふっと見るとニヤニヤしている宇野の姿があった。

「はっへ、えーーーーーー」と大声で叫んでしまった。

「うるさいよ酔っ払い、ここタクシーの中」とデコピンされた。

「え、だってなんでえ、てか宇野がいるの?」

「米倉に頼まれたんだよ、せっかく隣に居るんだし送れって」

慌てて携帯を見ると舞花からLINEが来ていた。

(私ってナイス〜、感謝しなさいよ!今度お昼ご飯奢ってね〜!)


舞花ナイス〜と思いながら自分のこの状況を考え直した。今二人っきりだよね、うん、告白する状況は整った。

「ねぇねぇ、私の家向かってるの?」と
上目遣いで聞いてみた。

「んー内緒かな(笑)」

なんだと内緒だと内緒……なんかすごく気になるけど黙っていた。タクシーの中での告白は流石にね……「着きましたよ」とタクシーの運転手が無愛想な声で言う。

「ありがとうございます。さ、いくぞ酔っ払い手を貸せ」

瞬時に絶好のチャンスだと判断して宇野に手を差し出す。

「ん」

なんかこの少ない言葉で通じ合うの。良い。恋人みたい、えへへ、とにやけてたら、宇野と目が合い、逸らしてしまった。あの切れ長な目に吸い込まれそうだった。


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