先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
出しながら聞いてくるマスターがおかしくてフッと笑いが漏れる。
何年ぶりかの来店なのに、よく頼んでいたウイスキーを覚えていてくれたのは有り難い。
ゆっくりとウイスキーに口を付けた。
「今日、あの子と話したわ。バカな弟が変な気回しちゃってね」
やっぱりそうだったか。
今まで避け続けてきた花笑はさぞかし動揺しただろう。置田のお節介にため息が出る。
「何を話したんだ。また脅すような事でもしたのか?」
「バカ光宏も、あんたも、ほんと私を鬼か何かと勘違いしてない?私ばっかり悪者にして」
ジト目で睨んでくるが本気で言ってる訳では無いようだ。俺も本気で言った訳じゃない。
「私はあの時何もしてないわよ。あなたは疑って聞く耳持たなかったけど、総務の子達が勝手にやっていたのよ。今なら少しは解ってくれるわよね?」
「…やっぱりそうか…。あの時は頭に血が登って一方的に操を責めてしまったが、冷静に考えるとお前がそんな事するとは思えなかった。ただ、花笑のためにお前とは関わらない方がいいと、今まで会うことを避けてたんだが…」