先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
あの時、
たまたまいつもは人気の無い資料室の前を通ったとき、ドアが少し開いていて中から騒ぎ声がして、ドンっという鈍い音とバサバサと物が落ちる音がした。
何事かと中に入ると、笑っている二人の女と散らばったファイルの中でうずくまる花笑が見えた。
俺はその時点で既に頭に血が登っていた。
「お前らっ!何やってんだ!」
「ひっ、山片さん」
「あっヤバッ」
急いで花笑の傍により抱き起こすが、花笑は俯いたまま、放心状態で青い顔をしていた。
キッと二人を見据えた時、
「何やってるの?あなた達」
操が入ってきた。
いくら噂に疎い俺でも操達が花笑に嫌がらせしてるらしいというのは耳に入っていた。
だが、姑息なことをするような奴では無いと知っているから、操に限ってそんな事するとは思えず、俺を避けていた花笑を捕まえ聞いても、そんな事は無いと言い張っていたから、現実に目の前にするまで半信半疑だった。
だが、今ここに居るということは…、
「お前ら、よってたかって花笑に嫌がらせしてたのか?」
「わ、私達何も…」
「そ、そうです、この子が勝手に転んだだけです」
二人は身を寄せ合い言い訳をする。
もう一度、花笑の顔を覗きこむと虚ろな表情。
俺とは反対側の頬が赤く腫れているのが見えた。
「おい、頬が腫れているが?」
唸るように言い放つ俺に恐れをなして黙りこむ二人。
「あなた達、何をしたの?ちゃんと話して」
操が冷静に話をしようとする。
「私達、操さんのために…」
「この子が生意気で、付き合ってる操さんと山片さんの邪魔をするから…」